紅き黎明の花嫁

唯一神の住まう玉座

悪しき道化師は嘲笑う

「ええいっ、憎らしい憎らしい憎らしいぃいいいっ!!!」

金で作られた趣味の悪い杖を振り回し癇癪を起こしている男を、従者達が遠巻きに眺めている。
冷静になる様に促した従者の一人は杖で凪ぎ払われ、何を言っても暴れ回る男が暴挙を止める様子はなかった。


「だ、旦那様…」
「おのれ、おのれおのれおのれアルザークめぇえっ!この儂を一度ならず二度までも虚仮にしおって、あの凡俗が!」

シエスタ製の豪華な絨毯を何度も蹴り付けた所で力尽きたのか、ラズクート=ハスゲイルは肩で喘鳴しながら握っていた杖を叩きつける。
フィリス侯爵時代に殺そうとした第一王子、あれは紛れもなくあの憎らしい子供だった。何処の馬の骨とも判らぬ男の子を王妃は身籠ったのだと、何度も何度もシャナゼフィスへ進言したと言うのに。
前代フィリス王妃、つまり亡くなったシャナゼフィスの母親もシャナゼフィスも聞く耳を持たず。あろう事か黒髪黒目の王子を寵愛し、牢へ繋ぐ事もしなかった。

次男ベルハーツこそ誠の王位継承者だ、と。幾らかの貴族仲間を率いて声を荒げても、ザナルさえ一笑に伏した。



お前の目には映らんのか。
見よ、アルザーク殿下もベルハーツ殿下もシャナゼフィス陛下若きお姿に瓜二つだ。



ザナルの厳格な声音、誰も行動にしなかった。だから自分が勝手出たのだ。
アルザークさえ居なくなれば、美しきフィリスに汚点を残さず住む。愛すべき郷土を守ろうとした侯爵、その自分が何故フィリスを追われなければならないのだ。



「…セントラルへ火急の文を送れ」
「お、仰せのままに。然し、如何な書状をお送りすれば宜しいのでしょうか?ラグナザードが執着しているのはアルザーク殿下ではなく、ベルハーツ王子殿下の方では…」
「痴れ者が!何とでも作り上げれば良いッ!フォンナートの若造如きではなく、ルーク=フェイン本人が出て来ざる得ない状況をだ!
 今こそあの憎きアルザークの首をッ、」

吐き捨てた男が唐突に言葉を止め、低く唸る様な笑い声を響かせれば、従者らは怯んだ様に息を呑んだ。


「…そう言う事か。道理であのニャムル、見覚えがあると思うたわ」
「旦那様…?」
「我輩に漸く運が回ってきた!…セントラルの前に、サブリナ監獄へ文を出せ…」


ラグナザードで最も恐れられる凶悪犯ばかりを収容している牢獄の名を出した男は、弛んだ腹を叩きながら甲高い笑い声を轟かせる。


「最早フィリスなんぞ何の価値もないわ」

欲塗れの醜い目を爛々と輝かせ、フレアスロットの伯父とは思えない男の声は絶えず続いていた。




「巧く行けば、我輩はラグナザードの貴族になれるであろう!」
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©Shiki Fujimiya 2009 / JUNKPOT DRIVE Ink.

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